自家用発電設備とは?使われ方や種類を解説

大規模な災害や停電が発生したとき、電気の供給が途絶えると病院やオフィスビル、工場などの施設は大きな打撃を受けます。そんなときの“最後の砦”が自家用発電設備です。

日常では目にすることの少ないこの設備ですが、非常時の電源確保にとって欠かせないインフラの一つです。本記事では、「自家用発電設備とは何か?」から、その種類、使い方、導入事例までをわかりやすく解説します。


目次

1. 自家用発電設備とは?

自家用発電設備とは、電力会社の送電線とは独立した形で電力を供給できる設備のことです。用途に応じて、常用、非常用、防災用などに分けられます。

大きなビルや工場、病院などの施設では、災害や事故による停電に備え、電力を自ら生み出す装置=発電機が用意されていることが一般的です。


2. 発電機の種類:用途別分類と種類別分類

自家用発電機は、大きく分けて以下の2つの観点から分類できます。


【A. 用途別分類】

● 常用発電機

通常から主電源として使用するタイプです。電力会社からの供給に頼らずまたは併用して、自前で電力をまかなう場合に使用されます。

事例:

  • 工場のコージェネレーション(熱電併給)設備
  • 島嶼部や山間部などの商用電源未整備地域
  • 電力需給逼迫時に自家発電でピークカットを狙うオフィスビル

● 防災用発電機(非常用発電機)

停電などの緊急時のみに稼働し、防災設備(スプリンクラー・排煙ファン・非常灯など)に電力を供給するために使われます。

事例:

  • 病院の手術室に電力を供給する非常用ディーゼル発電装置
  • 高層マンションの排煙設備を駆動させる防災用ガス発電機

● 常用兼防災発電機

平時は省エネ目的などで自家消費用に使用し、非常時には防災設備を動かす役割を兼ねるタイプです。

事例:

  • 地方自治体の庁舎:普段は空調用に使用し、災害時は避難所の照明や通信設備に転用
  • 高度なエネルギーマネジメントを行うスマートビル

【B. 種類別分類】

発電機は、どのような動力源・燃料で電気を作るかにより、以下のように分類されます。

● 内燃機関型

もっとも一般的なタイプで、エンジンの力で発電機を回す方式です。

  • ガソリンエンジン式:コンパクトで取り扱いが簡単。家庭用や小規模施設向け。
  • ディーゼルエンジン式:大出力・高効率。防災用として広く採用。

● ガス機関型

LNGや都市ガスを燃料とし、内燃機関で発電。排ガスがクリーンで、都市部での設置に適しています。

● 燃料電池型

水素と酸素の化学反応で電気を生み出す新世代の方式。騒音がなく、将来的に期待されている分野です。


3. ディーゼル発電機とは?定番の非常用設備

自家用発電設備のなかでも、最も普及しているのがディーゼル発電機です。軽油を燃料とし、エンジンで発電機を駆動させます。

【メリット】

  • 信頼性が高く、長時間運転が可能
  • 出力の立ち上がりが早い
  • 比較的安価

【デメリット】

  • 騒音と振動が大きい
  • 排気ガスが発生するため換気設計が必要

事例:

  • 病院での手術室、ICU、ナースステーションへのバックアップ電源
  • 製薬工場で温度管理が必要な製造ラインの保護用

4. ガス発電機とは?都市部で注目される低環境負荷型

都市部や災害拠点で増えているのがガスエンジン式発電機です。都市ガスやLPGを燃料として使用し、発電を行います。

【メリット】

  • 排ガスがクリーンでCO₂排出が少ない
  • 都市ガスが使えるため燃料備蓄不要
  • コージェネレーションとの相性が良い

【デメリット】

  • 設備コストがやや高い
  • 燃料供給が止まると稼働できない可能性あり

事例:

  • 政令指定都市の防災拠点庁舎にガス発電機を導入
  • 学校の体育館で災害時に避難所用空調と照明をまかなう

5. 開放形と閉鎖形の違いとは?

自家用発電設備は設置環境に応じて、次のように構造の異なるタイプが存在します。

● 開放形(オープンタイプ)

発電機本体がむき出しのタイプ。通風性が高く、冷却効率が良いですが、騒音や安全面に配慮が必要です。

使用場所: メンテナンスがしやすい専用機械室や屋外の囲い内など

● 閉鎖形(防音タイプ/サイレントボックス型)

防音・防塵性を高めた密閉構造。都市部や屋内設置で多用されます。価格は高めですが、周囲への影響を抑えることができます。

使用場所: オフィスビル地下、病院、商業施設などの屋内設置スペース

事例:

  • 大手金融機関の本店:防音型ディーゼル発電機を地下に設置
  • 官公庁:屋上に開放型ディーゼル発電機を設置し、自然通風を活用

6. 小型発電機の活用:工事用や非常用に便利な「持ち運び型」

一般的な発電設備とは別に、小型・可搬式の発電機も日常的に活用されています。

● 特徴

  • 重量は20~80kg程度
  • ガソリンや軽油が主流で、移動が容易
  • コンセントに直接電気を供給可能

【用途例】

  • 屋外工事現場での工具使用や照明
  • 災害時の避難所でスマホ充電・照明
  • キャンプ場やイベントの電源供給

事例:

  • 建設現場で電柱の引き込み工事時に使用される小型発電機(1.5kVA)
  • 2021年の大雨災害時、被災地に支給された小型インバータ発電機(ホンダ製など)

まとめ:自家用発電設備は安心と機能を支える縁の下の力持ち

自家用発電設備は、非常時のバックアップにとどまらず、普段の省エネ、BCP対策、防災・減災の面でも大きな役割を果たしています。

用途や設置環境に合わせて、発電機の種類や方式、構造の選定が重要であり、運用や保守まで含めたトータル設計が求められます。

日常生活では見えにくい存在ですが、電気インフラを支える“縁の下の力持ち”として、これからも重要性は増していくでしょう。

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