分電盤とは?電灯盤や動力制御盤とは違うの?

電力会社から届けられる電気を、建物や工場の各設備に安全かつ効率的に振り分けるための「分電盤」。一口に分電盤といっても、住宅・ビル・工場など用途や規模に合わせて形状や機能が異なります。また「電灯盤」や「動力制御盤」と呼ばれる専用盤も存在し、役割が微妙に異なるのが特徴です。本記事では、

  1. 分電盤の役割
  2. 分電盤の構成要素
  3. 分電盤の回路構成と住宅用の例
  4. その他の機能を持つ分電盤(太陽光売電・蓄電連携)
  5. 電灯盤や動力制御盤との違い

を中心に、豊富な実例を交えて解説します。


目次

1. 分電盤の役割:電気を使うところに「分ける」機能

分電盤はその名の通り、配電盤から送られてきた電力を「使う場所」に分岐(分電)するための盤です。大きな幹線から各部屋や各機械へ向かう回路を整えることで、過負荷や短絡が起きたときに「その回路だけ」を遮断し、他への影響を防ぎます。

事例1:一般住宅

2階建て住宅の分電盤は玄関脇に設置され、

  • 1~2階の照明回路(100V 10A)
  • 1~2階のコンセント回路(100V 20A)
  • キッチンIHヒーター(200V 20A)
  • エアコン室外機(200V 15A)

といった具合に用途別に分岐。ある日、キッチンのIHが故障で短絡した際、IH用ブレーカーだけが落ち、他の照明やコンセントはそのまま使えています。

事例2:中規模オフィスビル

各フロアごとに分電盤を設置し、

  • 執務エリア照明(100V 15A×複数)
  • OA機器用コンセント(100V 30A)
  • 空調設備(200V 40A)
  • 非常用照明/非常コンセント(回路独立)

といった回路区分。執務エリアでOA機器の過負荷が起きても、非常照明回路や空調には影響が及ばない設計です。

事例3:工場の生産ライン

複数の生産ラインに分電盤を配置し、

  • ラインA用制御盤電源(200V 50A)
  • ラインB用制御盤電源(200V 50A)
  • 照明・換気扇(100V 30A)
  • 緊急停止回路(専用ブレーカー)

として分離。ラインAがメンテナンス中に過電流が起きても、ラインBと非常用照明はそのまま稼働できます。


2. 分電盤の構成:主幹‐分岐‐盤内配線

分電盤は大きく3つの要素で成り立ちます。

(1)主幹ブレーカー

分電盤全体への電源を遮断する大容量遮断器。

  • 住宅用例:40A~60Aが主流。
  • ビル用例:100A~200A。
  • 工場例:500A以上の大容量を持つ主幹遮断器を複数並列。

(2)分岐ブレーカー

各回路に過負荷・短絡保護を提供。

  • 10A・15A:主に照明。
  • 20A・30A:コンセント、OA機器。
  • 40A~100A:エアコン、IH、モーターなど。

事例:運送会社倉庫では、フォークリフト充電用コンセントを50A分岐ブレーカーで保護し、照明回路(15A)は別に分けています。

(3)盤内配線

主幹ブレーカー→分岐ブレーカーへ電力を分配するバスバーや銅線。

  • 事例:高効率データセンターでは、銅バーを用い分岐数十回路をコンパクトにまとめ、省スペースとメンテ性を両立。

3. 分電盤の回路:住宅用なら単相200V回路と単相100V回路

日本の一般住宅の多くは単相3線式の分電盤を採用し、

  • 単相100V回路:テレビ、照明、冷蔵庫など
  • 単相200V回路:エアコン、IHクッキングヒーター

を両方供給します。

事例:一戸建て

  • 100V回路
    • リビング照明(10A)
    • TV・PC用コンセント(15A)
    • 洗濯機・電子レンジなどの2000W機器は100V 20A
  • 200V回路
    • エアコン(15A)
    • IHヒーター(20A)

これにより、高消費電力機器は200V回路で効率よく動作し、照明・家電は100Vで安全に利用できます。

事例:集合住宅(マンション)

分電盤は各住戸のPS(パイプスペース)内に設置され、同様に100V/200V回路を分岐。ある住戸のエアコンで200Vブレーカーが作動しても、他住戸や共用部の照明には影響せず、各住戸単位で管理されます。


4. その他の機能を持った分電盤:太陽光発電の売電や蓄電用

近年は、分電盤に再生可能エネ連携や蓄電池制御機能を付加する例が増えています。

(1)太陽光発電の売電回路

  • 事例:戸建住宅の分電盤内に「売電用ブレーカー」を設置し、パワーコンディショナー出力を売電メーター経由で電力会社回線へ連系。停電時には自立運転用スイッチで一部回路へ非常用電力を供給。

(2)蓄電池連携回路

  • 事例:商業施設のバックアップ用蓄電システムでは、分電盤に蓄電池用自動切替リレーや充放電制御用のブレーカーを統合。日中は太陽光+商用電力で稼働、夜間や停電時は蓄電池から給電。

5. 電灯盤や動力制御盤:用途別に分けてさらに細分化

ビルや工場では、分電盤のほかにも用途別に専用盤を設置します。

電灯盤

  • 役割:照明や100Vコンセントなど「電灯需要」専用
  • 事例:学校では各教室の電灯盤を設置。放課後に教室だけ電源OFF、廊下照明は別系統で常時点灯可能。

動力制御盤(動力盤)

  • 役割:モーターや大型機器など「動力需要」専用
  • 事例:製造工場の製品ラインには、各コンベアや攪拌機を動かす3相200V動力盤を設置。PLC連携で自動制御し、安全インターロックも装備。

シーケンス制御盤・PLC盤

  • 役割:プロセス制御・シーケンス制御用の盤
  • 事例:パッケージング工場では、温度制御や流量制御まで含むPLC制御盤をラインごとに配置。分電盤・動力盤と連携し、中央監視室から遠隔監視。

まとめ

  • 分電盤は電力を安全・確実に分岐し、用途別に供給する基本盤
  • 主幹ブレーカー/分岐ブレーカー/盤内配線で構成
  • 住宅では単相100V回路&200V回路を同一盤で管理
  • 太陽光売電回路蓄電池回路など多機能盤も普及
  • 大規模建物・工場では電灯盤/動力盤など用途別専用盤が連携

用途・規模・機能に合わせた盤選定と適切な設計・保守が、安定稼働と安全確保のカギです。事例を参考に、最適な電気盤構成を検討してみてください。

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