電力会社からの電気を受け取り、建物や工場内で安全に利用できるようにする受変電設備。その中核をなす主要機器には「受電用遮断器」「変圧器」「コンデンサ」「配電盤」があります。これらを適切に組み合わせることで、安定・安全・効率的に電力を利用できるのです。本記事では、それぞれの機器の役割を詳しく解説し、実際の導入事例を多数ご紹介します。
1. 受電用遮断器:事故を波及させない防衛ライン
役割と仕組み
受電用遮断器(CB: Circuit Breaker)は、電力会社の送電線から受け取った高圧電力に異常が起きた際、自動的に電流を遮断して事故を局所化し、他の需要家への影響を防ぐ装置です。
- 継電器で短絡(ショート)や地絡(アース故障)を検知
- 過電流や地絡電流が設定値を超えると瞬時に開放
導入事例
(事例1)集合住宅の受電柱
ある大規模マンションでは、受電用遮断器に地絡検知機能付きの高感度型を設置。漏電が約10mAを超えると即座に遮断し、感電事故を未然に防ぐ仕様です。最近、共有部分の非常灯回路で漏れ電流が検知され、遮断器が動作したため、早期に原因配線の絶縁劣化を発見・修理できました。
(事例2)工場のメイン受電盤
自動車部品メーカーの工場では、高負荷設備を多数抱えるため、2回線方式の受電用遮断器を採用。主系統が故障しても予備系統へ自動切替が可能なATS(自動系統切換装置)機能付きで、ライン停止時間を最小限に抑えています。実際に中央冷却装置が短絡事故を起こした際も、瞬時に遮断・切替し大きな品質トラブルを回避しました。
2. 変圧器:電気を使える電圧に変える
役割と仕組み
変圧器(トランス)は、高圧で受電した電力を100V・200Vなどの低圧に変換する装置です。可逆性が高く、損失が少ないのが特徴です。
- 柱上変圧器:屋外の電柱に取り付け
- 地上式変圧器:屋内または屋外に設置ボックス型で収容
導入事例
(事例1)オフィスビルの屋上地上変圧器
東京都内の15階建てオフィスビルでは、屋上に地上式変圧器を設置。メンテナンス時に屋外作業となりますが、雨天時でも作業できる『乾式変圧器』を採用し、油漏れリスクを排除。定期点検も容易で、オイル注入や交換の手間がかかりません。
(事例2)工場敷地内の柱上変圧器
香川県の水産加工場では、敷地内の電柱に柱上変圧器を設置し、高圧から200Vに降圧しています。敷地が狭いため地上スペースが取れず柱上型を選択。大規模冷凍機を稼働させるため200kVA級を2台並列運転し、可用性を確保しています。
3. コンデンサ:同じ電気で仕事を有効にさせる
役割と仕組み
コンデンサ(力率改善用コンデンサ)は、工場など大型需要家で必要な無効電力を補償し、力率(電力の有効利用率)を改善する装置です。
- 力率向上:電力会社から請求される『力率低下割増』を抑制
- 設備負荷低減:電流量が減り、ケーブル・遮断器の容量を有効活用
導入事例
(事例1)プラスチック射出成型工場
射出成型機のモーターが多く、力率が0.7前後に低下していた工場で、コンデンサバンクを導入。定格容量100kVARの自動調整型コンデンサにより、力率を0.95以上に向上。結果として基本料金(契約電力×単価)ではなく、力率割増分を年間約200万円削減しました。
(事例2)食品工場の冷却ライン
食品工場の遠心冷却機や圧縮機が並ぶ生産ラインでは、突発的に力率が低下するタイミングがあります。インバータ制御のモータも含め、リアクティブパワーが波状的に変動するため、ステップ制御コンデンサを設置。生産ピークに合わせ自動で接続・切断し、安定した力率改善を実現しました。
4. 配電盤:負荷に電気を配る
役割と仕組み
配電盤(分電盤)は、変圧器から受けた低圧電力を各回路に分岐し、安全に供給する設備です。主幹ブレーカ、分岐ブレーカ(負荷開閉器)、漏電遮断器などが組み込まれています。
- 主幹ブレーカ:全体の電気を一括遮断
- 分岐ブレーカ:各設備やフロアごとの回路保護
- 漏電遮断器:地絡事故や感電防止
導入事例
(事例1)オフィスのフロア配電盤
10階建ビルの各フロアに設置された配電盤では、照明回路、空調回路、コンセント回路を分岐。各分岐に20Aの漏電遮断器を配置し、万一の漏電でも当該回路だけを遮断。ある時、給湯室の電気ポット回路で漏電が検知され、そのフロア全体の停電を防ぎつつ給湯室のみ復旧を遅らせることができました。
(事例2)工場のライン配電盤
多品種少量生産の工場では、各生産ラインごとに専用の配電盤を設置。ラインAには30kW、ラインBには15kWの契約ブレーカを組み合わせ、過負荷が発生した際も他ラインへの影響を最小限に抑えています。夜間の清掃用照明や非常用照明は、別系統の分岐ブレーカで常時待機運転し、万一の停電時にも点灯するよう設計されています。
まとめ
受変電設備機器には、大規模から小規模まで用途に応じた多様な装置があり、それぞれが重要な役割を担っています。
- 受電用遮断器:他需要家への事故波及防止と供給安定性確保
- 変圧器:高圧を低圧に安全に変換
- コンデンサ:力率改善で電気料金削減と設備効率向上
- 配電盤:負荷ごとの回路保護と分配
これらを適切に組み合わせ、定期的な点検・メンテナンスを行うことで、受変電設備の安全性・信頼性を維持し、コストを抑えつつ安定して電力を利用することが可能です。導入事例を参考に、自社や自施設に最適な機器構成を検討してみてください。