企業や工場、商業施設などでは、大量の電力を効率的に利用するため、自家用電気工作物を設置し、電力会社と契約しています。その契約形態や料金体系は、使用する電力の特性や設備構成によって異なります。本記事では、自家用電気工作物に関連する契約や料金の仕組みについて解説し、具体的な事例を交えて説明します。
契約電力と受電電圧
自家用電気工作物の契約において、契約電力と受電電圧は基本的な要素です。
契約電力とは?
契約電力は、電力会社と取り決めた最大電力のことです。この値を超える電力を使用する場合、追加料金が発生したり、設備の停止が求められることがあります。
- 例1:大型工場の場合
大規模な生産ラインを稼働させる工場では、契約電力を高く設定し、多数の機械や装置が同時に稼働する状況を想定します。 - 例2:商業施設の場合
ショッピングモールなどでは、照明、エアコン、エスカレーターなど多くの設備が同時に稼働するため、契約電力が高く設定されます。
受電電圧とは?
受電電圧は、電力会社から供給される電気の電圧を指します。一般的に、自家用電気工作物では高圧(6,600V)や特別高圧(22,000V以上)で受電し、内部で必要な電圧に変換して使用します。
- 例1:小規模工場
小規模工場では高圧(6,600V)受電が主流で、変圧器を設置して必要な電圧に変換します。 - 例2:データセンター
データセンターなどでは安定した供給が重要なため、特別高圧受電を採用し、冗長性の高い設備構成を取ることが一般的です。
受電方式:1回線方式、2回線方式、ループ受電方式、スポットネットワーク方式
電力を供給する受電方式にはいくつかの種類があり、施設の規模や重要性に応じて選択されます。
1回線方式
1本の電力供給線から受電する方式です。設備がシンプルでコストが低い一方で、供給線に障害が発生すると電力供給が停止します。
- 事例:小規模な工場や店舗
コストを優先し、設備が単純な施設で採用されることが多いです。
2回線方式
2本の電力供給線から受電し、どちらか一方が故障してももう一方で供給を継続できる方式です。
- 事例:医療施設
病院などでは、停電が直接人命に関わるため、冗長性を持たせた2回線方式が一般的です。
ループ受電方式
施設内に配線をループ状に配置し、どこか一箇所が故障しても別経路で供給できる方式です。
- 事例:データセンター
高い信頼性が求められるデータセンターでよく採用されています。
スポットネットワーク方式
複数の電力供給源から同時に受電し、それを一つの系統にまとめる方式です。信頼性が非常に高いですが、コストも高いです。
- 事例:大規模商業施設
大規模なショッピングモールやイベント会場などでは、停電リスクを最小化するために採用されることがあります。
契約電力:変圧器の総容量、変圧器の容量に係数をかけた値
契約電力を決定する際、変圧器の容量が重要な指標となります。
変圧器の総容量
変圧器の総容量は、施設全体で必要とされる電力の上限値を示します。これに基づいて、契約電力が設定されます。
- 事例:工場
工場内の変圧器が2台あり、それぞれ500kVAの場合、総容量は1,000kVAとなります。
変圧器容量に係数をかけた値
契約電力を決定する際、変圧器の容量に係数(通常は0.7~0.9)をかけた値が基準となります。
- 事例:学校
学校の変圧器容量が300kVAの場合、契約電力は0.8を係数として240kWに設定されることが一般的です。
デマンドコントロール:ピークカットとピークシフトの例
デマンドコントロールは、電力使用のピークを抑えることで、契約電力や電気料金を削減する方法です。
ピークカット
ピークカットは、最大使用電力を抑えることを目的とした手法です。使用電力が急増する時間帯に、負荷を一時的に抑制することで対応します。
- 事例:冷暖房の調整
夏場の昼間に空調設備を分散して運転し、一度に稼働する機器を減らすことで、ピーク電力を抑える。
ピークシフト
ピークシフトは、電力使用のピーク時間帯をずらすことを目的とした手法です。
- 事例:夜間作業の実施
工場での生産スケジュールを変更し、夜間の電力使用を増やして日中の使用を減らすことで、ピークを平準化します。
まとめ
自家用電気工作物の契約と料金は、施設の規模や利用目的に応じて最適な方式が選択されます。契約電力や受電電圧、受電方式の選択、デマンドコントロールの活用など、適切な管理を行うことで、電気料金の削減や安定した電力供給を実現できます。
特に、デマンドコントロールは電力使用の効率化に直結するため、多くの企業や施設で取り入れられています。これらの仕組みを理解し、実践することで、より効率的で経済的な電力利用が可能になるでしょう。