無停電電源装置(UPS)とは?――「雷で一瞬落ちた」だけで止まる設備を止めないために

工場やオフィスで「停電は滅多にないから大丈夫」と思っていても、実際に厄介なのは“停電そのもの”より、雷などで起きる瞬時電圧降下(瞬低)や瞬停です。照明は点いたままでも、制御機器や通信機器だけが再起動して、ライン停止・データ破損・復旧作業が発生します。
そこで登場するのが無停電電源装置(UPS)と、電源品質まで作り込む定電圧定周波数装置(CVCF)です。


目次

現場の論点整理:これは「停電対策」ではなく「瞬低・電源品質対策」

まず論点を切り分けます。

  • UPSの主目的:瞬低・瞬停・短時間停電に対して「機器を止めない/安全に止める」
  • CVCFの主目的:停電時のバックアップに加え、電圧や周波数の変動を含む“電源品質”を一定に保つ(用途によってはUPS機能も組み合わせる)

ここで勘違いが多いのは、UPSを入れたら「長時間の停電でも動き続ける」と思い込むことです。一般的なUPSは稼働継続というより、数分〜数十分の“つなぎ”であり、その間に安全停止・データ退避・発電機起動などへ繋げる設計が基本です。


UPSとCVCFの違い:何に備える装置か

UPS(交流無停電電源装置)は、主に瞬低・瞬停への備えです。電力会社の供給は高信頼ですが、雷・系統切替・近隣設備トラブルなどで瞬低はゼロになりません。UPSは「自社の機器は自社で守る」ための最後の砦になります。

CVCF(定電圧定周波数装置)は、電源電圧や周波数の変動まで嫌う負荷に向きます。大容量の通信機器、サーバ室、データセンターなど「停電時でも安定した電源品質が必要」な領域で選ばれます。電源品質問題(電圧変動・周波数変動・波形歪み等)による誤動作を減らす思想です。

実務的にはこう整理すると判断しやすいです。

  • 「一瞬でも落ちると困る」「落ちたら復旧に時間がかかる」→ UPSが候補
  • 「落ちるだけでなく、電源の揺れが品質・通信・演算に影響する」→ CVCFも含め検討
  • 「停電が長いと困る」→ UPS単体ではなく、発電機・二重化・系統構成まで話が広がる

UPSは何でできているか:構成要素を押さえるとトラブルに強くなる

UPSの基本構成は、概ね次の4要素で理解できます。

  1. 蓄電池(バッテリー)
  2. 整流器(AC→DC変換してバッテリー充電・DC母線供給)
  3. インバータ(DC→AC変換して負荷へ給電)
  4. 切替スイッチ(商用・インバータ・バイパスの切替)

現場で効くポイントは「UPSは電力変換装置の集合体」であり、故障要因が“電池だけ”ではないことです。インバータ内部のコンデンサ劣化、温度環境、粉塵、接地・ノイズ環境などが効いてきます。


判断基準:何をもって「UPSが必要」「この容量が妥当」と言うか

社内説明や稟議で揉めるのは、必要性と容量の根拠が曖昧なときです。判断基準は次の観点で揃えると通りやすいです。

  • 安全:瞬低で安全機能が失われないか(非常停止、インターロック、保護回路)
  • 法令・監査:BCPや情報管理の要求、監査指摘(ログ欠損、データ保全)
  • 品質:瞬低による中間不良、データ破損、計測異常が起きないか
  • コスト:停止損失(復旧工数、廃棄、立上げ時間)とUPS導入・保守費の比較
  • 運用:点検・交換が継続できるか(電池交換の手配、設置場所、警報監視)
  • 人材:担当者が「いつ何を交換するか」を回せる設計になっているか

実装手順:現場で破綻しないUPS導入の進め方(番号付き)

  1. 守る対象を決める(全系統を守ろうとしない)
    守るべきは「落ちたら復旧が面倒」「落ちたら損失が大きい」「落ちたら安全上まずい」負荷です。制御盤、サーバ、ネットワーク機器、重要計測、監視記録など。
  2. 失敗の形を言語化する
    瞬低で何が起きるか。再起動か、通信断か、ログ欠損か、装置異常か。ここが曖昧だと容量も方式も決められません。
  3. 方式を選ぶ(UPSかCVCFか/バイパスや二重化要否)
    電源品質まで要求するか、瞬低だけ防げばよいか。設備の性格で切ります。
  4. 必要容量と必要時間を決める(“何分”の根拠を作る)
    一般論としてUPSは数分〜数十分です。目的は「運転継続」ではなく、
  • 安全停止に必要な時間
  • サーバのシャットダウン・データ退避に必要な時間
  • 発電機起動や系統切替に必要な時間
    のいずれか(または組み合わせ)で定義します。
  1. 設置環境を整える(寿命はここで決まる)
    温度、粉塵、換気、盤内スペース、点検性、配線経路、接地環境。特に温度管理が悪いと電池もコンデンサも一気に傷みます。
  2. 監視と保全計画を作る(導入して終わりにしない)
    警報の通知先、点検周期、バッテリー交換の時期、交換予算の確保までセット。ここが無いと“いつの間にか死んでるUPS”になります。

耐用年数の考え方:3〜5年は「目安」であって「保証」ではない

UPSの耐用年数は一般的に3〜5年が目安として語られますが、実務では「どの部品が先に寿命になるか」で見ます。

  • 蓄電池:温度・充放電履歴・放置状態で劣化
  • インバータ等の電力変換部品:内部コンデンサの寿命が効く
  • 周辺環境:接地環境や粉塵、換気不足で故障率が上がる

つまり「年数」だけでなく、設置環境と運用(警報監視・点検・交換計画)が寿命を左右します。稟議では「導入費」だけでなく、交換費・点検費を含めたライフサイクルで説明するのが現実的です。


よくある失敗と回避策

失敗1:全部守ろうとして容量が肥大化し、結局導入が流れる
回避:守る対象を絞り、重要負荷から段階導入する。

失敗2:「何分もてば良いか」が決まっていない
回避:安全停止・退避・発電機起動など、目的から必要時間を決める。

失敗3:設置場所が悪く、電池が早死にする(高温・粉塵・換気不足)
回避:温度・換気・点検性を要件に入れ、置けないなら盤外設置や場所変更も検討する。

失敗4:警報が出ても誰も見ない(UPSが沈黙して初めて気づく)
回避:通知先と一次対応手順を決め、月次で状態確認する。

失敗5:更新予算が取れず、寿命超過で使い続ける
回避:導入時点で「交換前提」を明文化し、更新費を平準化して積む。


要点まとめ(5行以内)

  • UPSは主に瞬低・瞬停への備えで、「自社機器を守る」装置。
  • CVCFは電圧・周波数の変動を含む電源品質を一定に保つ用途で効く。
  • UPSは蓄電池・整流器・インバータ・切替スイッチで構成され、故障要因は電池だけではない。
  • 稼働継続は数分〜数十分が基本で、目的(安全停止・退避・発電機起動)から必要時間を決める。
  • 寿命は目安3〜5年でも、設置環境と監視・保全計画で大きく変わる。

チェックリスト(10項目以内)

  1. 守るべき負荷(止めたくない機器)を列挙できているか
  2. 瞬低時の具体的な不具合(再起動・通信断・データ破損等)を言語化したか
  3. UPSかCVCFか、電源品質要求のレベルを決めたか
  4. 必要バックアップ時間の根拠(安全停止/退避/発電機起動)があるか
  5. 容量見積の前提(負荷容量、将来増設、突入電流)を整理したか
  6. 設置環境(温度・粉塵・換気・点検性・スペース)を満たすか
  7. バイパス切替時の影響(瞬断許容、系統構成)を確認したか
  8. 警報の通知先と一次対応手順が決まっているか
  9. 点検周期と交換周期(電池・消耗部品)を保全計画に落としたか
  10. 更新予算(ライフサイクル費)を導入時点で織り込んだか
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