受変電設備は、電力会社から供給される高圧または特別高圧の電気を受け取り、利用可能な電圧に変換するための設備を指します。この設備は、工場やビル、商業施設などに欠かせないもので、使用形態や設置環境に応じて「開放形(オープン式)」と「閉鎖形(キュービクル式)」の2つに大別されます。本記事では、それぞれの特徴や具体的な事例を交えながら解説します。
受変電設備とは
受変電設備は、電力を効率的かつ安全に利用するための重要なインフラです。高圧の電力を低圧に変換し、施設内の電力需要を満たすために設置されます。
- 構成要素
受変電設備は、変圧器、遮断器、開閉器、計測器類などで構成されています。これらの機器が一体となって電力の受け入れと変圧、分配を行います。 - 設置場所
工場や商業施設、大型マンションなどの需要家に設置され、電力の安定供給と保護機能を担います。
開放形受変電設備(オープン式)
特徴
開放形受変電設備は、機器が屋外や専用の受電室内に露出した状態で設置される方式です。各機器が独立して配置され、配線や設置スペースが自由に設計できる点が特徴です。
- 設置環境:主に屋外または広い室内
- 主な用途:大規模施設や工場など、広いスペースが確保できる場所
- メリット:
- 機器間の配置を自由に設計可能
- 各機器の点検や交換が容易
- デメリット:
- 設置スペースが広く必要
- 機器が露出しているため、環境要因(雨やほこり)の影響を受けやすい
事例:大規模工場
製造業の工場では、広大な敷地内に開放形受変電設備を設置する例が多く見られます。例えば、自動車製造工場では、電力需要が高いため、大型変圧器や遮断器を独立して設置し、電力の安定供給を図ります。さらに、故障時に個別の機器を迅速に交換できる点もメリットです。
事例:鉄道用変電所
鉄道用の変電所では、開放形が採用されることが一般的です。理由は、屋外設置が可能で、メンテナンスがしやすい点にあります。特に、鉄道車両への安定した電力供給が求められるため、開放形設備が適しています。
閉鎖形受変電設備(キュービクル式)
特徴
閉鎖形受変電設備は、キュービクル(箱型の構造)内に機器を収納して設置する方式です。すべての機器がコンパクトに収められているため、スペース効率に優れ、設置場所の自由度が高いことが特徴です。
- 設置環境:屋内外どちらも可能
- 主な用途:ビルやマンション、商業施設
- メリット:
- コンパクトで設置スペースが少なくて済む
- 機器が密閉されているため、安全性が高い
- 環境要因(雨、ほこり)の影響を受けにくい
- デメリット:
- 内部機器へのアクセスが難しく、点検や修理に手間がかかる
- 設置コストが開放形より高い場合がある
事例:高層マンション
高層マンションでは、地下や屋上に閉鎖形受変電設備を設置することが一般的です。限られたスペースを有効活用できる点が大きな利点です。また、住民が機器に直接触れる心配がないため、安全性の確保にも優れています。
事例:商業施設
ショッピングモールやデパートでは、キュービクル式がよく採用されます。これにより、限られたスペースに効率的に設備を収めることが可能です。さらに、閉鎖構造により、外部の人が誤って触れるリスクを最小限に抑えられます。
開放形と閉鎖形の比較
項目 | 開放形(オープン式) | 閉鎖形(キュービクル式) |
---|---|---|
設置スペース | 広いスペースが必要 | コンパクト |
安全性 | 低い(露出しているため) | 高い(密閉構造) |
環境影響への耐性 | 雨やほこりに弱い | 高い(防塵、防水性あり) |
点検・保守 | 容易 | 難しい(内部構造が複雑) |
設置コスト | 一般的に低い | 高い場合がある |
選択のポイントと注意点
用途に応じた選択
- 広い敷地や屋外設置が可能な場合
→ 開放形受変電設備を選ぶことで、メンテナンスのしやすさを確保。 - 設置スペースが限られている場合
→ 閉鎖形受変電設備を選び、効率的な空間利用を実現。
法令と安全基準の遵守
いずれの方式を採用する場合でも、電気設備に関する法令や基準を遵守する必要があります。特に、高圧設備における安全基準の確保が重要です。
まとめ
受変電設備は、電力供給の安定性と効率性を確保するために欠かせない設備です。開放形受変電設備は広いスペースで自由度の高い設置が可能で、主に大規模施設や屋外で採用されます。一方、閉鎖形受変電設備はコンパクトで安全性が高く、ビルや商業施設に適しています。
設置環境や用途に応じて適切な方式を選択することで、電力供給の安定性と効率性を最大化できます。それぞれの方式の特徴を理解し、具体的な事例を参考に、最適な受変電設備を導入することが重要です。
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