コジェネレーションシステムとは?

工場の現場でよくある話です。

「ボイラは常に回して蒸気を使っている。一方で、電気代は上がる。非常用発電機はあるけど、平常時は眠ったまま」。


熱も電気も“毎日ちゃんと使う”のに、つくり方だけは別々で、しかも片方(発電側)は大量の排熱を捨てている──この違和感が出発点になります。

コジェネレーション(Cogeneration / CHP: Combined Heat and Power)は、この“捨てている熱”を回収して、同じ燃料から電気と熱をセットで取り出す考え方です。熱と電気の両方が必要な場所では、ちゃんと刺さります。


目次

コジェネの正体は「熱の使い道を決める発電」

コジェネレーションシステムは日本語では「熱電供給システム」とも呼ばれ、英語ではCHP(Combined Heat and Power)です。
定義としてはシンプルで、単一の燃料(または単一の原動機)から、電気と有効な熱(蒸気・温水など)を同時に取り出す方式です。

ポイントは「発電すること」そのものよりも、発電で出る排熱を“使い切る設計”にできるかです。

  • 例:ガスエンジン/ガスタービンで発電 → 排熱回収ボイラで蒸気・温水をつくる
  • 例:燃料電池で発電 → 排熱を給湯・温水に回す(家庭用もこの系統)

分散型で現地発電し、捨てるはずの熱を回収するので、一般に総合効率(電気+回収熱)は高くなります。米EPAは、CHPの総合効率が65〜80%程度、条件次第で90%近くに達しうると説明しています。
国内資料でも、タイプ別に総合効率80%前後〜(燃料電池は高め)という整理がよく見られます。


論点の整理:何が問題で、何を決める話か

コジェネ検討は「省エネ設備を入れるか」ではなく、実務的には次の意思決定です。

  • 問題:電気と熱を別々につくることで、燃料・電力コスト、CO₂、災害時の脆さ(停電時の操業継続)にムダが出ている
  • 決めること
    1. 熱需要(蒸気・温水)のプロファイルに対して、回収熱を“捨てずに”使い切れるか
    2. 電力需要と運転時間に対して、発電を“回し続ける理由”があるか
    3. O&M(保守運用)と法令・系統連系を含む運用設計まで回せるか

結局、コジェネの勝敗を決めるのは**熱の需要(量・温度・時間帯)**です。電気だけ欲しいなら別の選択肢が強い場面もあります。


判断基準:安全/法令/品質/コスト/運用/人材で見る

現場で使える判断軸に落とすと、こうなります。

1) 熱電比(熱と電気の“比率”)が現場と合うか

  • 蒸気が多い工場(洗浄・乾燥・加熱・空調)なら相性が良い
  • 熱が少ないのに発電を大きくすると、排熱の行き場がなくなり“捨て熱運転”になって効率が崩れます

2) 運転時間(稼働率)を稼げるか

  • コジェネは「回してナンボ」。操業が短い、休日停止が多い場合は採算が崩れやすい
  • 逆に24/7に近い設備(ユーティリティ連続、冷温水、給湯負荷が常時ある等)は強い

3) 電気料金・燃料価格・CO₂の前提が社内で合意できるか(稟議の芯)

  • 投資はCAPEXが重いので、「何年で回収」だけでなく、燃料単価・電力単価・稼働率の感度分析が必要
  • CO₂評価がある会社は、削減価値(将来の炭素コスト含む)も論点になります

4) 系統連系・電源品質・保護協調まで見えるか

  • 連系保護、逆電力、停電時の自立運転の要否、保護リレー協調など、電気側の設計が“後付けで詰む”ポイント
  • 生産設備の瞬低・周波数変動の許容も確認

5) 保守運用体制(人材・外注)

  • 定期点検、消耗品、オーバーホール周期、停止時のバックアップ(ボイラ・受電)
  • 「ベンダー任せで何とかなる」は危険。責任分界と緊急時対応が回るかが重要

実装手順:導入を“設備”ではなく“運用システム”として組む

現場導入の手順を、実務の順番に並べます。

  1. 熱需要の棚卸し(量・温度・時間帯)
    • 蒸気圧力、温水温度、ピークとベース、休日・夜間負荷
    • 熱の使い道(給湯/加熱/空調/プロセス)ごとに“いつ・どれだけ”を出す
  2. 電力需要の棚卸し(ベース負荷の把握)
    • 30分デマンド、ベースとピーク、瞬低許容、重要負荷
    • 「自家消費優先」なのか「ピークカット」なのか目的を固定
  3. 方式選定(ガスエンジン/ガスタービン/燃料電池等)
    • 熱の形(蒸気が必要か温水で足りるか)で大枠が決まる
    • 施設規模、騒音・排気、設置スペース、排熱回収の温度レベルも比較材料
  4. 容量(kW)を決める:原則は“熱側に合わせて控えめ”
    • よくある鉄則:熱を捨てない範囲で発電容量を置く
    • 追加の熱需要(冬季の空調、工程増設)も織り込むが、過大は避ける
  5. 熱回収・熱供給系の設計(ここが主役)
    • 排熱回収ボイラ、熱交換器、温水タンク、蒸気配管、戻り温度
    • 余剰熱が出る場合の逃がし先(吸収式冷凍機、予熱、蓄熱など)を設計段階で用意
  6. 電気側の設計(連系・保護・計測・制御)
    • 連系保護、逆電力、遮断器容量、保護協調、計測点(発電・回収熱・燃料)
    • 監視は「見える化」ではなく、燃費悪化や回収熱低下を検知するために設計
  7. O&M設計(止め方と直し方を先に決める)
    • 定期点検計画、部品供給、緊急時の連絡体制、代替運転(ボイラ単独運転等)
    • 稼働率が価値なので、停止時間を短くする段取りがROIに直結

よくある失敗と回避策

失敗1:発電量を欲張って熱が余り、結局捨てる

  • 回避:容量は“熱で縛る”。余剰熱の行き場(空調・蓄熱・予熱)までセットで設計

失敗2:「省エネ設備」扱いで、操業・保全の当事者が不在

  • 回避:ユーティリティ担当(ボイラ)と電気主任側(連系・保護)を最初から同席させる

失敗3:計測点が足りず、燃費悪化に気づけない

  • 回避:燃料投入、発電量、回収熱量、放熱(捨て熱)を最低限押さえる。改善が回る

失敗4:停電時に使えると思ったら、系統連系条件で自立できなかった

  • 回避:自立運転を目的にするなら、必要負荷・切替方式・保護設計・訓練まで“非常時運用”を別プロジェクト扱いにする

家庭用コジェネ(エコウィル/エネファーム)をどう位置づけるか

家庭用は「熱需要(給湯)が毎日ある」点で理屈が通ります。

  • エコウィル:家庭用ガスエンジンコジェネの代表格でしたが、新規販売は終了しています(例:大阪ガスの案内では2017年9月30日で新規販売終了)。
  • エネファーム:燃料電池で発電し、排熱でお湯をつくる家庭用燃料電池コージェネ。停電時の自立運転対応モデルなど、運用条件で価値が変わります。

家庭用も工場用も本質は同じで、「熱の使い道がある場所で強い」。逆に、熱が余るならコジェネは途端に鈍ります。


要点まとめ(5行以内)

  • コジェネ(CHP)は、同じ燃料から電気と有効な熱を同時に取り出し、捨て熱を減らす仕組み。
  • 成否は“発電量”ではなく、“回収した熱を捨てずに使い切れるか”で決まる。
  • 判断軸は熱電比・稼働率・連系設計・O&M体制・コスト前提の合意。
  • 手順は、熱需要棚卸し→容量決定→熱回収設計→連系・保護→O&M設計の順が安全。
  • 熱と電気を両方使う現場(蒸気・温水が常時ある場所)では特に効く。

チェックリスト(10項目以内)

  1. 熱需要(蒸気/温水)の量・温度・時間帯を数字で持っている
  2. 休日/夜間の熱需要があり、稼働率を稼げる見込みがある
  3. 発電容量を“熱で縛る”方針(余剰熱を出さない設計)になっている
  4. 余剰熱が出る場合の逃がし先(空調・蓄熱・予熱など)を設計に入れた
  5. 系統連系の前提(逆電力、保護協調、自立運転要否)が整理できている
  6. 生産設備の電源品質要件(瞬低・周波数)を確認した
  7. 計測点(燃料・発電・回収熱・捨て熱)を最初から定義した
  8. 定期点検・部品供給・緊急対応のO&M体制を確保した
  9. 停止時のバックアップ(ボイラ単独運転等)と切替手順がある
  10. 稟議用に、燃料/電力単価・稼働率の感度分析を用意した

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